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岡山家庭裁判所高梁支部 昭和41年(家)66号 審判 1966年11月01日

申立人 ○○孝義(仮名) 外一名

主文

申立人の氏「○○」を「小山」と変更することを許可する。

理由

申立人両名は、主文のような審判を求め、申立の実情をつぎのように述べている。

一、申立人○○孝義は戸籍の筆頭者で、申立人ハルナはその妻である。

二、申立人○○孝義は、○○市に合併する以前の○○郡○○村当時に、村会議員を二期勤めたことがあり、農業のかたわら牛馬商をしていたが、一〇年位前からは桐材の仲買人をしており、新潟、秋田方面にたびたび桐材を買いに出かけており、その取引について、申立人の氏が、申立人の住所地においてはもとより右の取引先方面においても、特殊部落の出身者と見られており、取引に支障をきたしたこともある。

又幼少時より特殊部落出身者とみられて、いわれない屈辱と差別感を抱きつつ成長して来たが、申立人自身はもちろん、子女らのためにも「○○」の姓に似かよう「小山」の姓を称したいので申立に及んだ。

よって本件記録中の戸籍謄本、当裁判所調査官の調査報告書によると、つぎのようなことが認められる。

(1)  申立人は本籍地の高等小学校を卒業し、農業に従事して来たが学校当時や、軍隊生活において、「○○」の姓の故に部落出身者とみられ、いわれない差別と屈辱をうけて来たが、それに反撥し成功によってみかえしてやろうと商売に熱中し、その努力と信用によって公職にも推選され、取引においても順調に発展の道をたどって来た。

しかし申立人のみならず、その子、孫にいたるまで、部落出身者と見られ今後ともなお引き続き陰に陽に差別を受けるおそれがあるため、かねてより改姓の希望を強く抱いていたことが認められる。

(2)  申立人の居住する○○市においては「○○」の姓は特殊部落出身者の表象とみられており、保守的色彩と閉鎖性の強い○○市においては、今後なお根強い差別意識の残存するであろうことが認められる。

以上によれば、申立人らの改姓についての本件申立は、戸籍法一〇七条一項にいわゆるやむを得ない事由ありと認められるから、主文のとおり審判する。

(家事審判官 谷口貞)

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